企業概要書「IM」

IMとは「Information Memorandum」の略称で、売り手側の様々な情報が記載されており、一般的にそのボリュームは十数ページを使ってまとめられています。IMには企業名、所在地などの基本情報から、事業の概要やビジネスモデル、財務資料や主要取引先まで詳細情報について正確な数値・金額が記されています。買い手側は、秘密保持契約を締結した上で、この資料をもとに精査な分析を行い、M&Aを進めていくかどうかを検討します。

IMに記載する8つの内容

  1. 企業概要(エグゼクティブサマリー)
    社名や所在地、資本金や株主構成などの基本的な情報の他に、事業概要・業務フロー・財務内容・業界の状況・希望条件を中心に写真やグラフを用いて記載していきます。
  2. 事業内容
    自社あのビジネスモデルがどのような形態かを、主要な販売先、仕入先の情報も含めて記載していきます。実際の取引をフローチャートで説明したり、取扱商品やサービスを写真付きで説明したり事業価値を理解してもらいます。
  3. 組織
    「代表者プロフィール」「会社沿革」「株主・役員一覧」「従業員概要」などを記載します。数値化された情報だけでなく、創業時の想い、営業力、許認可の取得、有資格者も記載しましょう。
  4. 財務状況
    過去からの推移と現在の財務状況が分かるように3期分の貸借対照表と損益計算書、製造業の場合は製造原価報告書の全情報を掲載します。資産や負債、収益などに急激な変動があった場合や借入金、社債については理由などを注記します。
  5. 譲渡理由
    なぜ譲渡を検討しているか、譲渡後のビジョンなど詳細に記載します。
  6. 許認可・法規制
    事業に特別な許認可や法規制がある場合には、詳細な情報が必要です。
  7. 資産・設備の状況
    事業拠点や不動産を整理し、地理的特徴のイメージを高めてもらいます。敷地が複数の市区町村にまたがる場合は地図に掲載するなどしましょう。所在地や面積、所有形態は必ず記載しましょう。また工場などの固定資産や製造設備、機械などは所在地、面積の他に取得価格も記載します。内部レイアウト図などを挿入しておくとより魅力が伝わります。その他、車両やリース資産、非事業資産がある場合は、それぞれ分けて記載しましょう。リースの種類やリース債務についても併記しましょう。
  8. 事業計画
    将来に向けた事業計画や現在実行中の計画がある場合は記載します。特に実行中の計画はM&A後に引き継ぐことになるため、計画達成までの進捗率や実現可能性、達成時に得られるものなどをできるだけ細かく記載しましょう。

売り手側にとって、自社を正しく評価してもらうためには、自社の魅力を上手く買い手側に伝えなければなりません。どのような強みをもって事業を展開し、どのくらいの収益性を生み出しているのか、などをしっかりと伝える必要があります。IMはその目的と役割を果たすために作成されます。ヒアリング等を通じて作成するため定量評価だけでなく、自身が気づいていない自社の強みを訴求することもできます。


ノンネームシートとの違い

M&Aにおいて売り手側が情報を開示する目的で作成する資料には、IMの他にノンネームシートがあります。ノンネームシートは「ティーザー」と呼ばれることもあり、M&A初期段階において用いられる売り手側の基本情報を記載したものです。会社が特定されない範囲にまとめた内容しか記載しません。会社名、所在地は記載しません。また、売上高や営業利益もおおよその数字で記載します。そのため買い手側の関心の有無を確認する資料として、M&A初期段階(秘密保持契約の締結前)に開示されます。